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これからの研究

これからも面白そうだと思ったことにはどんどん首を突っ込み,悩みすぎるよりはサクッと手を動かして,ひとまず結果を出していくスタイルで研究を行いたいと考えています. 取り組む具体的なテーマは未定ですが,以下のようなことに関連する研究をしたいと考えています.

これまでの研究

これまでの研究を簡単に紹介します.

無線メッシュネットワークのためのメッシュルータ配置位置決定手法
IEEE802.11sにより標準化されている無線メッシュネットワーク(Wireless Mesh Network: WMN)では, 情報をバケツリレーのようにホップして次のコンピュータへと届けるようにして通信を行います. WMNはメッシュトポロジを有していますので,複数の経路を使い分けることもできて, 障害発生時には迂回経路を用いて通信の継続を試みることもできます.
その一方でWMNは, 周波数リソース割当の問題や,隠れ端末,さらし端末問題など, 無線通信に起因する種々の解決すべき課題を抱えています.
これらの問題に対して,混合整数線形計画法を用いたチャネル割当の研究[1]や, ネットワークの仮想化技術のSDNを使ってWMNの設定変更を容易にする研究[2]が行われています.
本研究室では,これらの問題に対してメッシュルータの配置位置を最適化することによって, 種々の問題を解決することを目指しています.
しかしながら,WMNのメッシュルータ配置位置最適化は,多目的の施設配置問題であり,これはNP-困難な問題です. NP-困難というのは,平たく言うと,コンピュータにとって解くことが難しい問題のことです. つまり,メッシュルータ数の増加に伴って,厳密解を得るために必要な計算量が爆発的に増大してしまいます. そのため,実時間内に厳密解を求めようとするアプローチは現実的ではありません.
そこで,厳密解ではなく,比較的良い解を現実的な時間で求めることを目指します. じつはNP-困難な問題に対して,このような場合に有効なメタヒューリスティクスという手法が知られています. 本研究では,メタヒューリスティクスに基づいたメッシュルータ配置最適化システムを実装して, シミュレーションによって本手法の有用性を示しています.

[1] Yi Tian, Takuya Yoshihiro, “Traffic-Demand-Aware Collision-Free Channel Assignment for Multi-Channel Multi-Radio Wireless Mesh Networks”, IEEE Access, Volume 8, pp. 120712-120723, 2020.

[2] Ricardo Santos, Konstantin Koslowski, Julian Daube, Hakim Ghazzai, Andreas Kassler, Kei Sakaguchi, and Thomas Haustein, “mmWave Backhaul Testbed Configurability Using Software-Defined Networking,” Wireless Communications and Mobile Computing, Volume 2019, Article ID 8342167, https://doi.org/10.1155/2019/8342167, 2019.

MANETのためのルーティングプロトコル評価
MANETは,Mobile Ad-hoc Networkの略です. 日本語では,移動性をもつ一時的なネットワークという意味になります. 各端末が縦横無尽に動き回るような環境が想定されるので,ネットワークはその形状を次々と変化させます. つまり,今つながっている端末が,次の瞬間には通信が途切れているかもしれない環境が想定されるネットワークです. また,情報をバケツリレーのようにマルチホップする特徴があります.
MANETでは,どのように情報を伝送すればよいか考える必要があります. アプローチ方法は大きく分けて3つあります. 1つは予めネットワークの状態をできるだけ把握しておく方法で,これはプロアクティブ型と呼ばれます. もう1つは通信需要が発生してから通信経路を確立する方法です.これはリアクティブ型と呼ばれます. そして,プロアクティブ型とリアクティブ型を組み合わせたハイブリッド型があります.
プロアクティブ型では,端末同士が定期的に情報をやり取りすることで, ユーザが通信を行う前に,予めネットワークの状態を把握しておき,経路を確定しておきます. こうすることで,通信需要に即座に対応することができます. 一方で,通信需要が無い場合であってもネットワークの状態を把握するためのやりとりを行うので, 結果的に通信が無駄になるかもしれません. MANETでも,頻繁にネットワークトポロジが変化しない場合はプロアクティブ型が有利でしょう.
リアクティブ型では,通信需要が発生してから,宛先の端末を探し,経路を確立します. そのため,通信需要が発生してから実際に送信を開始するまでにタイムラグが発生します. しかし,通信需要が無い場合は無駄な通信が発生しませんので,バッテリの寿命が伸びるなどのメリットがあります.
これらのプロトコルの多くは実験段階のプロトコルなので, 実機を使って様々な環境下で評価する必要があります. そこで,本研究ではルーティングプロトコルによる通信性能差を評価しています.
MANETのためのノードクラスタリング手法
MANETは,Mobile Ad-hoc Networkの略です. 日本語では,移動性をもつ一時的なネットワークという意味になります. 各端末が縦横無尽に動き回るような環境が想定されるので,ネットワークはその形状を次々と変化させます. つまり,今つながっている端末が,次の瞬間には通信が途切れているかもしれない環境が想定されるネットワークです.
そんなMANETもある程度集団でまとめることができると,通信効率を高めることができます. そんなことがあるのかと思うかもしれませんが, たとえばニンテンドースイッチなどの携帯型ゲーム機を公園に持ち寄って, 近くの人と遊んでいるような状況は想定ができると思います. その公園の側をバスが通ったときに,もしバスの乗客が同一の携帯型ゲームで遊んでいれば, そこですれ違い通信が発生するかもしれません.
この,まとめられるある程度の集団をクラスタと呼びます. また,集団にまとめることをクラスタリングと呼びます. あるクラスタの代表端末が,隣接するクラスタの代表端末と通信をして, クラスタ内部の端末とは比較的近距離の通信を行うことで,通信の高効率化や省電力化を図ることができます.
じつはフリスの伝達公式という有名な式があって,理想的な環境であっても, 通信に要する電力は通信距離の2乗に比例して大きくなります. 現実的な環境では通信に要する電力は距離の3乗から5乗程度大きくなると言われていますので, 通信を行う端末間の距離はある程度近い方が好ましいのです. (近すぎるとそれはそれでまずいことが起きますが,それはまた別の機会に)
すこし脱線しましたが,MANETにおいてクラスタリングが役立つことはわかっていただけたかと思います. しかしやはり縦横無尽に動き回る端末をどのようにクラスタリングすればよいのでしょうか?
本研究では,ファジィ理論を用いて,クラスタに収容する端末数や,クラスタの中心からの距離などのパラメータに基づいて, クラスタリングを行う手法を提案しています.
WSANのためのアクタ選択手法
WSANは無線センサアクタネットワークの略です. アクタというのは,ロボットだと思ってください. なんらかのアクションを行う装置です. センサは,イベントをセンシングしてアクタにその発生を知らせます. センサもアクタも複数配置され,とくにアクタは協調的な作業が可能であると仮定されます. ここでイベントというのは,火事やゴミの発生,停電といったものを指し, 主に予め発生時間と発生箇所を予期できないものを指します.
センサがイベントをセンシングして,その発生をアクタに知らせた後, 果たしてどのアクタがそのイベントに対処するべきでしょうか? 単純に最も近いアクタが向かうというのも一つの戦略ですが, イベントの種類によるアクタの得意不得意やバッテリ残量など,そういったパラメータを考慮する方が合理的でしょう.
本研究では,センシングされたイベントを対処するアクタをファジィ理論に基づいて選択する手法を提案しています.